かなり前ですが、ある女性と話す機会がありました。
その女性は30代でご両親と暮らしておられたのですが、
「本当に本が好きで好きで、困ってるんです」と仰るのです。
えっ、活字中毒ってことでしょうか?と聞くと、
そうではなくて、蔵書の管理が大変なのだと言います。
もう子供の頃からの真の「本の虫」で、暇さえあれば常に活字を追っていたい。
活字の世界にはまりこむのが好きでたまらない。
さらに、読み終わった本をどうしても捨てることができない…、
そういうことでした。
「困ってるって、相当量の本がおうちにあるんですね?」
「そうなんです。私の部屋は2階なんですけど、
どうもその下の1階部分、天井がたわんでいるような気がして…。
本の重みのせいで、家が歪んでるんじゃないかって思うんです。」
これはすさまじいですね。さらに女性は続けます。
「もうこのままじゃ、地震がきた時なんか怖いので、
プレハブ物置を買って、蔵書専門にしようと思ってるんです。
ほら、●人乗っても大丈夫っていう、アレです」
女性は穏やかに笑っていましたが、私には何となく想像することができました。
彼女は近い将来、強固な物置を買ってお庭に置くのでしょう。
そして蔵書をぎっちりと詰め込み、がらんとしたお部屋を見て
「ああ、これで気兼ねなく新しく本を買える!」と思ってしまうのです。
話していて不思議だったのですが、彼女には
「蔵書を選んで処分する」
「断捨離する」
という観念が全くありませんでした。
愛着がありすぎて、捨てることを考えられないのです。
これでは蔵書は雪だるま式に増えていく一方で、
将来彼女は2つ目、3つ目と物置を買うはめになるのだろうな、
と感じられました。
新たに収納スペースを作ることは、
「これでもっと別のモノを詰め込める」と錯覚を起こしてしまう危険を伴います。
そこに惑わされず、
自分の持ち物の量について常に疑問を抱き続ける姿勢が、
収納上手への道ではないでしょうか。